2015/09/25(金)松尾流「人生の歩き方」 #5
人混みに紛れる。
今日の仕事は、「最近、街のゴロツキどもが騒がしいので、調査して欲しい」と言ったものだ。
最近は、そういう街の治安を守るようなことも、するようになった。それだけ、平和であると言えば平和だと言えるのかもしれない。
夜の繁華街をうろつく。
ちんぴらがたまに絡んでくることもある。しかし、その瞬間に肉体的に黙らせるので、そこまで邪魔にはならない。
ひとまず、いくらか、風俗店や屋台などで情報を集めていく。
「最近、どんな感じですか?」
「あぁ、前よりか、荒れてきている気がするよ」
屋台のじいさんも、そのように感じているようだった。
3時間ほど情報を集めたが、あまり成果が上がらない。
これは直接聞いてみるしかないと判断する。
そうと決まれば、後の行動は決まっている。
俺は、だらだらと歩き、そこら辺のゴロツキにぶつかってやる。
当然のごとく、絡んでくる彼をその場で取り押さえ、話を聞くことにした。
わりとすんなりと、話が進み、大体のことがつかめてきた。
話をまとめると、このようになる。
「この地域のゴロツキどもを率いているのが、「清水組」らしいがどうやら、そこのお頭の調子が悪いらしい。そのせいで、最下層の統制が効きにくくなっている状態だ。」
今日の成果としてはそれだけで十分なので、そいつを解放して俺は帰ることにした。
2015/09/19(土)松尾流「人生の歩き方」 #4
週末。
街には紙袋やレジ袋などを山ほど持った幸介がいた。
「何でこうなってるんだ?」
「明日、一緒に遊びに行かない?」
佳織が少し首を傾けつつ聞いてくる。
金曜日の放課後。
明日は第2土曜なので、休みである。
公立の学校では週休二日なのかもしれないが、この学校は第2・第4土曜日以外の土曜日は学校があるのだ。
「どうせ荷物持ちだろう?」
こいつの魂胆など分かり切っている。
案の定、佳織は頭をかきながら、
「ばれちゃったかー」
などと言っている。
「とにかく、俺は荷物持ちだけなんじゃ行かないからな」
「分かってるわよ。ちゃんとその分の借りは返すから」
「どうやってだよ」
「……」
どうやらそこまで考えていなかったらしい。
「何も考えてないなら言うなよ」
「うぅ。とにかくちゃんと返すから来なさいよ!」
なぜかキレられる俺。
と、ちょうどそこに優花が来た。
なぜ、清水を名前で呼んでいるかというと、
(いつまでも、名字じゃなくて、名前を呼んでください)
と言うことだそうだ。
「どうかしたかな?」
と、佳織は今さっきまでの表情はどうしたのか、平常に戻って、
「明日遊びに行こうかって話してたとこ」
とたん、優花の目が輝く。
「本当! 行きたいな!」
佳織はこちらを振り返って、にやりと笑う。
自分の形勢の悪さを知り、シゲに助けを求める。
「明日遊びに行かないか?」
が、
「俺パスな」
あまりにも、素っ気ない。
俺の表情から、どんな状態にあるのか瞬時に判断したのだろう。
耳もとで、
「すまん。今度ラーメンおごってやるから」
と言って、我先にと帰っていった。
そんな訳で、今のこの状態があるのだ。
「ってか、おい! 少しは持ってくれよ!」
鍛えているとはいえ、さすがにこの量はきつくなってきた。
「いいじゃない。男でしょう?」
「いや、さすがに限度があるだろ!」
「これぐらいで精一杯なのかな……」
優花が、残念そうな表情をして言う。
そう言われると、男というものは馬鹿だ。もう少しがんばろうかと思ってしまう。
「……まだ大丈夫だけど」
「よし、じゃぁ、次行くわよ」
「はいはい」
その後、また何件か回った後、せっかくだから、ボウリングをして帰ろうかと言うことになった。
自分のレーンの席に座って、くつろぐ。
今まで荷物を持ち上げ続けていた腕を伸ばして、少し生き返った気がした。
「ふぅ、佳織からだぞ」
「……うん」
と言って、ボールを構える姿は、どう見ても危なっかしい。
「重すぎるんじゃないか?」
と言って、手に持っているボールを奪い取る。
9ポンド。妥当なところである。
「ひとまず、1ポンド下げてみたらどうだ?」
「分かった」
一旦9ポンドのボールを戻し、8ポンドのボールを持ってくる。
少しはましになったようだ。
次は、優花の番だ。
彼女の持ってきたボールは10ポンド。
(小柄な彼女にしては、少し重いのでは……。)
と、思った俺の不安を打ち消すかのように、1発でストライクを決めてしまった。
「うまいわね」
「うん。ボウリングは昔からうまいの」
「いいなぁ」
佳織は昔からボウリングが苦手なのだ。
俺は、疲れはあるものの、やれるところまでがんばろうと思っていた。
スコア争いは、必然的に優花と俺の二人になる。
別に、競う必要はないのであるが、やはり、ボウリングというものは競ってこそである。
一進一退の攻防が続き、ついに10投目。
優花が先だ。
今まで見たことがないほどの集中力を見せる。
まるで別人のようだ。
結果はターキーでスコアが58本差になる。
この差をひっくり返すには、ターキーを仕返すしかない。
気持ちを集中させて、一点をねらう。
まず1投目。
ここは順当にストライク。
しかし、ここで喜んではいられない。
後、2つ。
焦る気持ちを抑えて、
2投目。
ここも、何とかストライク。
1本が残りそうになったので焦った。
残るは後ひとつ。
もう俺には、ピンしか見えてはいなかった――
結局、俺は3投目もストライクも出して、2本差で優花に勝つことが出来た。
しかし、それからというもの、優花がリベンジをしたがるので困る。